特集1 知っておきたい胃がんや大腸がん 予防と早期発見の重要性
あすかい病院 非常勤医師
堀松 高博
がんは日本人の死因の第一位であり、その中でも胃がんと大腸がんは特に注意が必要です。国立がん研究センターの最新データによると、2019年の日本人のがん罹患数は約100万人で、そのうち胃がんは約12万人(第3位)、大腸がんは約15万人(第1位)と推計されています。また、がんによる死亡者数は約38万人で、胃がんが約4万人(第3位)、大腸がんが約5万人(第2位)を占めています。
定期的な検診で早期発見を
胃がんと大腸がんは、初期段階では自覚症状がほとんどないことが特徴です。胃がんの症状としては、みぞおちの痛み、食欲不振、吐き気などが挙げられます。一方、大腸がんでは、便通の変化、血便、腹痛などが主な症状です。しかし、これらの症状が現れる頃には、がんがある程度進行している可能性があります。そのため、定期的な検診が極めて重要です。胃がん検診では、胃バリウム検査(40歳以上1年おき)や胃内視鏡検査(50歳以上2年おき)が行われます。大腸がん検診では、便潜血検査(40歳以上1年おき)が一般的で、陽性の場合は大腸内視鏡検査を受けることが最も勧められます。
検診を受けて何か見つかったら不安だと思われるかも知れませんが、早期発見された場合、胃がんと大腸がんは比較的治療成績が良好です。最近は内視鏡手術や腹腔鏡手術など、身体に負担の少ない治療法も発達しており、患者さんの負担を軽減しつつ効果的な治療が可能になっています。また最近の研究では、早期発見された方が医療費も安くなることが報告されています。
ピロリ菌と胃がん予防
予防法としては、バランスの取れた食事と適度な運動が重要です。塩分や加工肉の過剰摂取を控え、野菜や果物を積極的に取り入れることが推奨されます。ただ、これらの生活習慣改善で予防できる割合はそれほど多くはありません。
しかし、胃がんの場合はピロリ菌の除菌治療が予防に大きな効果があることが分かっています。2019年時点で、30歳未満の若年層では感染率が10%以下まで低下していますが、50歳以上の日本人の約50%がピロリ菌に感染していると推定されています。ピロリ菌に感染しているかどうかは血液検査でも判定できますし、内視鏡検査でも推定することは可能です。
胃がんと大腸がんは、早期発見・早期治療が可能ながんです。そして定期的な検診を受けていただくことで、がんで亡くなるリスクを大きく減らすことができます。不安や疑問がある場合は、遠慮なくかかりつけ医にご相談ください。あなたの健康を守るために、私たちは常に最新の医療環境と技術を提供する準備をしています。
内視鏡室準備作業