公益社団法人 信和会 京都民医連第二中央病院

特集1 超高齢化・多死社会の到来と、在宅医療のこれから

超高齢社会が進行し、疾病構造が変化する中で、私たち医療者が担うべき役割も大きく変わろうとしています。特に、世界が経験したコロナ禍は、平時であっても起こりうる将来の医療逼迫を先取りで経験する機会となり、病院完結型医療の限界と、地域全体で患者さんを支える医療体制の重要性を浮き彫りにしました。
多くの国民が「最期まで住み慣れた場所で過ごしたい」と願う一方で、通院が困難になったり、入退院を繰り返している患者さんは少なくありません。病気は改善しても、暮らしが立ち行かなくなる。こうした課題に直面したとき、私たちに何ができるのか。それは、病院での「治療」と在宅での「暮らし」をシームレスにつなぎ、患者さん一人ひとりの人生に伴走していくことではないでしょうか。

当院「往診センター」が大切にしていること

当院「往診センター」は、「在宅医療を通じて、老いや病気や障害を抱えながらも住み慣れた場所で安心して過ごすことができるような地域作りに貢献していく」という理念のもと、24時間365日、患者さんを支えるパートナーでありたいと願っています。
左京区南部のエリアを、総勢19名の各科専門医を含むチームが訪問診療に伺い、現在約380名の患者さんの療養生活を支援しています。私たちは、単に疾患を管理するだけでなく、患者さんを「生活者」として捉え、その人らしい暮らしと選択を支えるために、特に次の3つの取り組みに力を入れています。

1「暮らし」と「不安」に寄り添う医療の実践

私たちは「医療だけでなく暮らしも支える」「患者さんやご家族の抱える不安や負担に向き合う」ことを何よりも大切にしています。体調変化への不安に対しては、積極的な臨時往診(月平均60件)や電話でのフォロー(テレナーシング)で迅速に対応しています。また、療養生活の背景にある介護力不足が、実は再入院の大きな要因となっていることも少なくありません。私たちはケアマネジャーをはじめとする介護職の皆さまと密に連携し、医療の前にまず介護の基盤を整える視点を重視しています。

2 顔の見える多職種連携とICTの活用

 「困ればみんなでカンファレンス」が私たちの合言葉です。医療介護連携SNS「Medical Care Station(MCS)」を活用しながら、地域の訪問看護ステーション、ケアマネジャー、薬局、介護事業所の皆さまと密に情報を共有し、患者さんの変化に対して、チームとして迅速に対応できる体制を整えています。また、地域に開かれた勉強会の開催や、地域のケア会議への積極的な参加などを通じて、地域全体の医療・介護の質の向上にも貢献したいと考えています。

3 病院と在宅を繋ぐシームレスな連携

在宅医療は、病院の先生方との連携なくしては成り立ちません。私たちは、病院での治療を在宅療養に確実につなぐため、3つのフェーズを意識しています。1つ目が退院前カンファレンスで患者さん・ご家族の不安を和らげる「ひきつぐ」フェーズ。2つ目は退院直後の不安定な時期を特別訪問看護指示などを活用し手厚く支える「在宅で頑張る」フェーズ。そして、3つ目がやむなく入院が必要となった際に、在宅での暮らしの情報や患者さんの思いを的確に病院へ申し送る「つなぐ」フェーズです。これらのフェーズを意識することで不要な入院を避け、患者さんが望む場所での療養を可能な限り継続できるよう努めています。

患者さんの思いを未来へつなぐために

地域の患者さんが、たとえ病を得ても、最期までその人らしく輝き続けられるために、私たち往診センターが、医療を患者さんの暮らしの場へとつなぐ、信頼できる架け橋となれれば幸いです。「通院が負担…」「退院後の生活が不安…」といったお悩みの患者さんがおられましたら、ぜひお気軽にご相談ください。