京都民医連第二中央病院広報誌 2014年12月発行 vol.22

認知症があっても、私らしく私たちらしく暮らし続けるために

認知症のケアには「これが正解」はなく、「こう対応すると上手くいく可能性がある」と言えます。 その人にあったケアとその人にあったオーダーメイドの支援があってこそ、「認知症があっても自分らしく、自分たちらしく」の生活を続けていくことが出来ます。 その第一歩として、認知症の事を知り、正しい知識を持ちましょう。

1.『本人に自覚がない』は大きな間違い

認知症になってしますと何もわからなくなる

 認知症の方が語られているお話から、認知症の症状に最初に気づいているのは本人です。 日常生活の中で、もの忘れによる失敗や、今まで問題なく出来てきた家事や仕事がうまくいかなくなる事が徐々に増え、「何かおかしい」と感じ始めるところから始まります。 また、まさか自分が認知症とは思えず、歳のせい、周りのせいと思いながら過ごし隠そうとしてしまう方もおられるのです。

2.苦しみの中必死で過ごしている

 「まさか自分が」という症状を感じながら、認知症の患者さんは必死に生活をしていこうと頑張られます。 今までしてきた何十倍もの努力の中生活をしなければいけない状態です。 その中で、時に感情のコントロールが利かなくなったり、気分の落ち込みから元気が無くなったりする弊害も出てきます。

3.認知症が進んでも…

 認知症が進むと、周囲の人からは「何も分からない」と捉えられる事が増えていきます。 しかし、どれだけ認知症が進んでも感情はあります。寝たきりになり、自分で出来る事が減っていっても、耳も聞こえています。 対応してくれる人の雰囲気もちゃんと感じています。認知症が進んでも大事にしなければいけない最重要なポイントは「人間らしく」尊厳をもって接することです。

4.認知症があっても「私らしく」「私たちらしく」過ごして頂くために

認知症は脳の病気です。まずは、正しく診断してもらうことが大切です。

 「ただの物忘れ」と思っていると、時に『慢性硬膜外血腫』『正常圧水頭症』など脳の病気が潜んでいたり、身体的な病気から認知症と同様の症状をきたすことがあります。 これらの病気は治療することで認知症症状が良くなったり、治ったりすることもあるのです。
 「ただの物忘れ」と放置せず、心配な点がありましたら、かかりつけのお医者様にご相談してみて下さい。

認知症と診断されても…

※出来る事は自分でしましょう。介護者側は本人が出来る事を見守りサポートするようにして、なるべく本人の出来る力を奪わないようにしましょう。
※認知症だから…となんでも援助してしまうと、出来なくなるのを早めてしまいます。出来る事をしてもらうことで認知症の進行が緩やかに経過します。

1.周囲が支援する

元気でいること

 家族、友人、関係機関、専門職、住民などがネットワークを作り、いつでも介護する方の相談に乗ったり連携をとりながらサポートをして、介護する方を一人にさせない。

2.介護する方自身の健康管理をする

 介護サービスなどを利用して、休養、リフレッシュを積極的にはかり、介護する方自身の健康を維持、増進する。

3.介護する方だけで負担を背負わない

 介護保険や地域のネットワークを活用して同じ立場にある人とのつながりや、本音を話せたり相談ができるコミュニティーをもち社会とつながる。


認知症になっても、認知症を介護する側になっても
「人間らしい尊厳がある日々を送ることが出来る」

そのためには、医療・福祉・介護、地域・家族が手を組んで支え合っていくことが必要なのです。