京都民医連第二中央病院広報誌 2005年11月発行 vol. 4
どうなる? 介護保険
2000年4月実施の介護保険制度も早5年経過し、今年6月に「改正」介護保険法が成立しました。今回は、2005年10月に実施されたものと、2006年4月から実施予定のものと、2段階に分けて見直しがされます。
10月から居住費・食費が全額自己負担に!
今年10月から、介護施設(当院では、療養病棟でショートステイされる場合)を利用された場合は「居住費・食費」が、通所介護・通所リハビリテーションを利用された場合は、「食費」が介護保険給付から外され、利用者負担になりました。その結果、利用者は月数万円の負担が増し、一方で、介護施設は収入がダウンすることになりました。
現行 →10月 | |
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大部屋の場合 | 5.4万円→8.1万円 |
ユニット個室の場合 | 5.4万円→13.1万円 |
在宅と施設の給付が不公平?
今回、国は「在宅にいる方と施設にいる方の給付と負担が公平になるように」と言って、施設利用時の自己負担を大幅に増額しました。しかし、重介護者を24時間介護すれば当然費用がかかります。現行制度では、一人暮らしの重介護者を在宅で支えようとすると、ほとんどの場合保険で決められた限度額をオーバーし、自己負担が発生しています。「公平にする」というなら私たち国民にとって少しでも良い方へ合わせてほしいものです。その上、施設へは生きているうちに入れるかどうかわからない待機状況。まずは、この現実を何とかして欲しいものです。
栄養管理は高齢者にとって重要なのに…
栄養管理は、病気の回復や生活改善に重要です。今回は、その大切な食事を、通所介護・通所リハビリテーションの給付から外し、全額自己負担としています。しかも、「食事負担が高くて払えない方は、ご自由におにぎりでも持ってきても良いですよ」と厚生労働省の通知。これおかしいでしょ? 一人では偏り勝ちな栄養を、通所リハビリで補っている現実をどう考えているのでしょうか?
2006年4月からも次なる問題が…
2006年4月から、新予防給付・地域支援事業などの新しい言葉が介護保険に登場します。「要介護状態にならないように」「要介護状態を悪化させないように」と、介護予防を重視することは大賛成(但し中味にもよりますが)です。しかし、国の思惑は、現在介護認定者の5割を占める要支援や要介護度Ⅰなどの軽度者に、使える家事援助サービスを制限するなど、介護保険給付を縮小し、国の負担を軽減するところにあるようです。
介護保険ができた当初は「自立支援」「自己決定」「介護の社会化」と、「家族、特に女性を介護から解放しよう!」ということが随分強調されていたのですが、いつの間にか「介護の社会化」は姿を消し、家族がいると、家事援助(ヘルパー給付)は制限される現状にもなってきています。
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- 解説は
- 在宅介護支援センター第二中央病院
- 太田美和子 所長
- でした。
結局は国の予算に、内容を合わせた改悪
まだまだ多くの矛盾や疑問はありますが、まとめて言うと、「国の予算に制度の内容を合わせよう」とするところからくる矛盾だと考えます。「高齢者、家族のありたい姿」に制度や予算を考えるのと全く逆になっているとしか思えません。
これまでも利用者や関係者が声を上げ、制度の矛盾点に対し、見直しをさせた成果もあります。大事な点は「一人一人の人間が、どう地域で暮らしたいのかそのために何が必要なのか」です。そこにしっかり目線を据えて、制度内外での工夫や、要求・提言など諸機関や地域の方々と協力して行きたいと思います。
介護に関する相談は、京都市在宅介護支援センター第二中央病院(直通電話075-701-3588)まで