京都民医連第二中央病院広報誌 2010年5月発行 vol. 14

「芍薬」 Gorou Ishikawa

運動の力で歴史は進む

門院長京都民医連第二中央病院
院長 門 祐輔

 4月11日の京都府知事選挙は、現府政を大いに追いつめた選挙だったと思います。

 丹後・与謝地域の中核医療機関である与謝の海病院で脳神経外科医が不在になった問題の解決を、京都第一赤十字病院の力を借りて建てなおさざるを得なくなったことは、結果的に私のマニフェストで「府立医大だけに頼るのでなく、オール京都で医療崩壊を建てなおすべき」と主張してきたことの正しさを、証明したものになりました。

 現知事は選挙直前に自身のマニフェストを発表し、私の主張に似た内容を載せてきました。私「子どもの医療費は小学校卒業まで通院も無料にします」「私立高校の授業料の全額免除制度を年収500万以下世帯へ拡充します」。現知事「通院についても小学生を中心に対象を拡大します」「所得500万円程度までの家庭にも支援を拡大していきます」

選挙中の様子

 現知事は、これまでは「頑張る企業」(=力のある企業)を応援しますと言っていたのが、今回のマニフェストでは「頑張れない事情がある方たちを支え、…」と表現を改めざるを得なくなりました。力のあるところを伸ばせば何とかなるという構造改革路線からの転換であってほしいものです。

 選挙公示後、ある自治体の長と電話をした時に、「門さんが出馬してくれて、ようやく府の重い腰があがりました」と言われました。この言葉は、私たちの運動が現府政の姿勢を大きく動かした証明ではないでしょうか。単なる争点隠しだけではないことをしっかりと注視していくことが必要だと思います。下記サイトで2~3週間ごとに行われる知事の記者会見が見られます。

http://www.pref.kyoto.jp/koho/kaiken/kaiken2010/index.html

選挙で通して得た確信

 今回の選挙で実感したことはたくさんあります。一つは医療・介護など社会保障分野だけでなく、経済・雇用、子育て・教育、若者、農林漁業、…とさまざまな分野、地域で従来の矛盾が吹き出していることです。「医師の会」、「弁護士の会」、歯科医、保守の方など、従来の枠を超えるたくさんの方々が応援してくださったのはその反映だと思います。

 二つ目は、京都府は広く、起こっている問題は地域ごとで全く異なるということです。立候補表明以来、丹後から南山城村まで何度も現地の声を聞いてまわりましたが、かたやマンモス校、かたや学校の統廃合と求められることは正反対です。それだけに「地域のことは地域で決める」=「地域住民主権」が大切だと実感しました。

 三つ目は、運動が歴史を動かすということです。今回の選挙が京都府の姿勢を動かしてきたことは、最初に述べました。この間京都府内26市町村長のうち10の長と懇談できましたが、みなさん共通して住民が何を要望しているか、ということには極めて敏感でした。思想信条ではないのです。運動で行政、歴史は変えられるのです。「署名なんて…」と思われがちですが、結構効果があるのです。

早川先生と

運動の力を今後も

 マスコミの力は大きく、今回も「共産対非共産」「同じ構図で低調」「低投票率が心配」と、自ら低投票率を煽っているように見えました。従来の枠にとらわれない発想はマスコミにも求められているのかもしれません。もちろん運動を進める私たちにも問われている課題です。

 私は、再び第一線医療の現場へ戻りますが、今後も「いのちの平等」「くらしの再生」を守ることのできる京都を実現できるよう、運動の力で歴史を進めていきましょう。