京都民医連第二中央病院広報誌 2014年5月発行 vol.21
茶山のさとの『嚥下食』をご紹介します
言語聴覚士 志藤 良子
介護老人保健施設「茶山のさと」は2011年11月に開所した70床の施設です。平均年齢85歳、平均介護度4と高齢で介護度の高い方が多く、そのため、食べたり飲みこんだりに障害(摂食嚥下障害)のある方も多い施設となっています。
栄養士・調理師のための調理実習
嚥下食の改善
NHKの取材
開所時から「摂食嚥下障害があっても、おいしく、安全に食事をとっていただくこと」に力を入れています。 1年目には、従来のミキサー食をミキサー固形食に変更しました。ミキサー固形食は、調理した食材一つ一つを別々にミキサーにかけた後、裏ごしし、60度で固まるゼリー化剤でかため、仕上げたものです。 色や形、味、口あたりなどを重視しています。 米国の医療分野の研究者が視察にこられた時に、このミキサー固形食を見て「ミキサー食はどこにでもあるけど、ミキサーにかけた物を再形成したものは今までみたことがありません。 すばらしい仕事をされていますね」とお褒めの言葉をいただきました。
2年目には、きざみとろみ食をやわらか食に変更しました。 やわらか食は、形は残したままで素材自体をやわらかくすることを重視し、肉軟化用酵素や圧力鍋を使用したり、揚げ物は、揚げてから煮るなど調理に工夫をこらしています。 普通食にこだわりのあった嚥下障害の方にも好評です。
地域に広がれ嚥下食の和
これらの嚥下食や嚥下障害の方への対応方法などを地域に広げようと様々な取組も行っています。 出前や押し売り勉強会・調理実習から、依頼されての講演、学会発表など大忙しです。 同じ志をもつ「京滋摂食嚥下を考える会」にも参加し、その会を企画する日本料理アカデミーや、京都府生菓子協同組合・お茶の福寿園とコラボした、料理やお茶・和菓子の会なども施設で行いました。 テレビやラジオ、新聞にも取り上げていただき、大きな広がりをみせています。信和会内でも職場を超えた嚥下の勉強会が始まりました。
これからも、長くおいしく安全に口から食べていただけるよう、色々な活動を行っていこうと思っています。
第二中央病院の『摂食嚥下口腔ケアチーム』をご紹介します
第二中央病院 摂食嚥下口腔ケアチーム責任者 看護師長 佐藤 ひろみ
食事は、人に満足感を与え、喜びを与え、そして生きる意欲も与える大きな力をもったものです。第二中央病院には、患者さんが、できるだけ口から食べられるようになるための援助をするチームがあります。
病院嚥下チーム
このチームは、もともと看護師のケアの質向上のために立ち上げたのですが、年々メンバーが増え、今では看護師、言語聴覚士(ST)、管理栄養士、歯科衛生士(あすかい歯科)、そして昨年度から医師も参加して運営しています。
何らかの原因で嚥下障害(うまく飲み込むことができない)をきたし、食事形態に工夫が必要な入院患者さんのケアについて話し合っています
例えば、水分のとろみの濃さやどの製品でとろみをつけるのかなどについて検討したり、行事食の嚥下食について安全対策の検討を行ったり、窒息のリスクのある食事形態について検討をしています。また、嚥下機能(飲み込む力)を向上させるための食前体操について学習・検討しています。
会議にはあすかい歯科の歯科衛生士に来ていただき、歯磨きなどの口腔ケアが自分でうまく出来ない患者さんへのケアについても話し合っています。口腔ケアの物品を検討したり、口腔ケア回診を行い、歯科衛生士に専門的なケア方法を学んだりもしています。
そして、チーム会議の中でミニ学習会をしたり、院内スタッフ向けに学習会を企画したりもしています。
院内では、他にも医師と言語聴覚士による嚥下回診や嚥下カンファレンス、必要に応じて嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査も実施しています。
食事中に咳が出るムセるなど、飲み込むことに心配のある方は、ぜひ当院スタッフに相談してください。
また、当院ではNST(栄養サポートチーム)も活動しています。嚥下障害で飲み込みにくい患者さんにも必要なカロリーや栄養素を上手に摂取してもらうために活動しています。