京都民医連第二中央病院広報誌 2011年7月発行 vol. 16

「夏雲」 Gorou Ishikawa

3月11日の前と後―価値観の転換と新しい道―

門院長京都民医連
第二中央病院
院長 門 祐輔

 3月11日東日本大震災発生10日後に、宮城県へ支援に行った。病院の中は落ち着きを取り戻しつつあったが、避難所は大変な状況だった。阪神大震災との違いは高齢化の進行。体の不自由な人、認知症の人が目立ち、本人も家族も疲弊していた。避難所を運営していたのは公務員である市役所の職員。自らも被災しながら、子どもを実家へ預け24時間体制で活躍していた。その中で裏方としての医療者の役割を感じた。
  原発事故は安全神話を打ち破り、これまでのエネルギー政策、生活様式を根本から問い直している。豊かな農作物、家畜は汚染され、たくさんの人が生活の基盤を失った。生産工場や電力を地方に依存している都市部の弱点も明らかになった。
  今回の災害の教訓は、災害への備え、公(おおやけ)の大切さ、高齢社会を支える医療・介護の役割、都市部と地方の共生、将来を見通したエネルギー政策と産業活性化などが重要だと痛感したこと。経済至上主義でなく、自然や人を大切にする地域分散型産業の育成、経済発展を期待したい。
  医療・介護は安全・安心の基礎であり、地域の絆が弱まる中、まちづくり・コミュニティーの一翼としての役割が期待されている。本院の災害マニュアル、インフラの見直しとともに、一層地域に開かれた病院づくりに努めたい。