京都民医連第二中央病院広報誌 2008年11月発行 vol. 11
関節リウマチを克服するために
日本リウマチ学会専門医
日本リウマチ財団登録医
日本内科学会認定医
中川 裕美子
「治る」病気、関節リウマチ
関節リウマチは現在でもその原因は完全には解明されていない病気です。古くは「流れ」を意味するギリシャ語「ロイマ」と呼ばれていました。リウマチでの関節の痛みが、ちょうど水が流れるようにあちこちと移り変わるために、こう呼ばれるようになったのです。
17世紀の画家ルーベンス(*1)も関節リウマチに苦しんでいたことが伝えられています。
今までは関節の変形が次第に進行していく、難病でしたが、21世紀現在、治療法がめざましく進歩し、ついに「治る」時代をむかえました。
ではリウマチについて少しお話ししましょう。
関節リウマチの症状について
関節リウマチの診断基準
- 1時間以上続く朝のこわばり
- 3個所以上の関節の腫れ
- 手の関節(手関節、中手指節関節、近位指節関節)の腫れ
- 対称性の関節の腫れ
- 手のエックス線写真の異常所見
- 皮下結節
- 血液検査でリウマチ反応が陽性
関節リウマチの症状は、ひじょうに多様で発病初期には個人差が大きく、また、関節リウマチ以外にも関節の痛みを伴う病気は沢山あります。
そこで、関節リウマチの診断には、アメリカリウマチ協会(ARA)(現アメリカリウマチ学会(ACR))がつくった診断基準が使われています。
この診断基準は、以下の7項目からできています。4項目以上満たせば関節リウマチと診断します。
ただし、1.から4.までは6週間以上持続することが必要です。
上記の症状が全部そろわなくてもできるだけ早期にリウマチの診断をつけようという方向になっています。
関節リウマチの治療方法は?
治療には大きく分けて基礎療法、薬物療法、理学療法(リハビリ)、手術療法の4つがあります。この中では薬物療法の進歩はめざましいものがあります。
まず「非ステロイド系消炎鎮痛剤(いわゆる痛み止め)」や「ステロイドホルモン」があります。これらは、関節の痛みや腫れを改善するのに有効です。
また、関節リウマチは免疫の異常が原因だといわれていますのでこの免疫異常(*2)を抑える治療が開発されてきました。「抗リウマチ剤」といわれるものです。
また最近では「生物学的製剤」という免疫異常を強力に抑える治療薬があります。「抗リウマチ剤」や「生物学的製剤」は十分な内科管理を行いながら使用すれば、関節の変形をくいとめることも可能です。
京都民医連第二中央病院の
リウマチ外来(要予約)
●毎週火曜日
13時30分~16時
●予約電話
075-701-6111(病院代表)
患者様のために
私は内科医であるという強みを生かして、患者様の全身状態に注意をはらって治療にあたっています。京都民医連第二中央病院は、呼吸器内科医や腎臓内科医をはじめとして各分野の専門医がそろっていますので、副作用出現時の対応は十分できると考えています。また整形外科との連携も行っています。
リウマチがあっても仕事がしたい、家事をしたい、学校にいきたい……皆さんの夢を実現するために当院の医師、看護師、リハビリスタッフ、薬剤師、その他すべてのスタッフは日々研鑽しています。これからもよろしくお願いいたします。
(*1)「聖アンナと聖家族」ルーベンス
(1577~1640)
この絵にある「イエスの祖母アンナの左手」は進行したリウマチの手として描かれています。リウマチが一般に認められるようになったのはこの絵が描かれた200年ほどあとのことです。
(*2)免疫異常(自己免疫ともいいます)
「免疫」とは本来私たちの体を外敵から守るためのしくみ(システム)です。
このしくみ(システム)が異常を起こし、自分自身(関節など)を攻撃してしまうことをいいます。
患者会の活動について
当院では、リウマチ外来が始まって10年になります。最近ではリウマチの患者会を1年に1回開催し、お茶とお菓子を楽しみながら、親睦を深めたり、勉強したりしています。
写真はこの10月16日に行われた植物園での散策の様子です。約2時間ゆっくりと秋の草花、木々の間を歩きました。車いすも借りたのですが、結局必要ありませんでした。ベンチに座っておやつを食べながら、自己紹介。ミニ学習会も行い、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、事務のスタッフが質問にこたえました。
このような会ができたのも、リウマチの治療法が進歩し、関節障害を食い止められる時代になったからだと思うと感慨深いものがあります。