京都民医連第二中央病院広報誌 2010年11月発行 vol. 15

シリーズ:おススメDVD

内科 武田英希

大いなる休暇

大いなる休暇

原題
LA GRANDE SEDUCTION/SEDUCING DOCTOR LEWIS
2003年
カナダ
監督
ジャン=フランソワ・プリオ

語の舞台はカナダ・ケベック州の小さな島、サントマリ・ラモデルヌ島。かつて盛んだった漁業も廃れ、島民は仕事もなく失業保険で何とか生活している。そんな島に希望などあるはずはなく、なんと町長自ら島を捨てて都会へと逃げてしまう。そこに降ってわいたのが、プラスチック工場建設の話だった。ただし、条件は「島に定住する医者がいること」だった。もちろん無医村なサントマリ島で、島民あげての医師獲得作戦が始まった。
  そこで島にやってくることになったのが、若い形成外科のルイス医師。当初は1カ月だけの予定であったが、なんとか彼を島に定住させようと、島ぐるみの大作戦が始まる。
  彼がクリケットが好きだと知れば、島民みんなでクリケットを覚え、島民みんながクリケット好きだとアピールする。よく知られているように、冬が長く厳しいカナダではアイスホッケーが最も盛んなスポーツであり、クリケットは(特に、フランス語圏のケベック州では)マイナーなスポーツであると考えられる。ルイス医師が島に到着するシーンでは、彼の乗った船の上から島民がクリケットを行っているのが見えるシーンがあり、島民の予想通りルイス医師は感激する。わかりやすいぞルイス医師。また、彼が大好きなビーフストロガノフを食堂のメニューに入れ、彼の好きなジャズを島民みんなが楽しむ。
  ルイス医師は、島民の趣味が自分と同じであることに感激するのだが、嘘で塗り固められたものはいつかは崩れ落ちるわけで、さて、この島民たちの涙ぐましい努力は結実するのでしょうか…?
  本来であればシリアスになりがちな離島での医師獲得だが、ここではコメディタッチに描かれている。内容はほとんどおとぎ話である。大きな出来事もなく、島民たちの大作戦を除けば、島の日常は淡々と過ぎていく。深く考えずに楽しむのが良い映画であった。