京都民医連第二中央病院広報誌 2009年4月発行 vol. 12
シリーズ:おススメDVD
内科 石橋 修
ザ・インタープリター
2005年 アメリカ監督:シドニー・ポラック
国連を舞台に、住民の虐殺を糾弾されているある国の大統領暗殺計画をめぐって命を狙われることになった国連通訳の女性シルヴィア・ブルーム(ニコール・キッドマン)。秘密を持つ彼女に疑いを抱きながらもその身を守るため に行動する捜査官(ショーン・ペン)。二人は、最初は“川の両岸”にいてわかり合えないと反発しながら、暗殺計画に関わっていく。暗殺計画の行方は、そして、二人は川の同じ側に立つことができるのか。重厚な社会派サスペンスである。
ニコール・キッドマンはもちろん美しく、みとれるほどだが、それにもましてショーン・ペン、かっこいいのである。心に屈託を抱えて寂しげであるが、強い意志を秘めている。任務には忠実で、プロである。「こんな中年になりたい」である。この二人の関係がどうなっていくかも、是非観ていただきたいポイントだが、アメリカ映画にしては控えめな表現は大いに私好みであった。
一方でこの映画は、2001年9月11日同時多発テロ以降のアメリカの有り様を問うている。
復讐はなにをもたらすのか、テロのもたらすものとは、銃を使わずに置くことができるのか、そして真実の声をささやくことの意味とは、対岸にいたものがわかり合えるのか。シドニー・ポラックはこの映画で、こういった問いかけに答えを出そうとしているように見える。今からみても、十分見応えがあり、いろいろな見方ができる。
3年前この映画を観たときに、こういった映画がメジャーで配給されるようになったことに、ある種の安堵を覚えたことを今でも思い出すのである。アメリカこそ正義という無邪気な映画が多い中、良心的な一作として私の一押しである。
最後に、ネタバレ覚悟で。“Vengeance is a lazy form of grief”このキッドマンのセリフをどう訳すのか、DVDの字幕、台詞を比較し、自分なりの訳を考えるのも一興である。